今月の金継ぎ/2021年9月
イベント報告 今月の金継ぎ
2024年12月14日(土)
「家電をなおす会」報告レポート イベント報告
元エンジニアのスーパースタッフたちと一緒に家電をいじくりまわしてみる実験的なワークショップ・家電をなおす会。
今回は、ラジカセの修理についてご紹介します。
DC入力端子の接触が不安定になっているとのことです。
それでは、早速修理に取り掛かりましょう!
はじめに、DCプラグとDCジャックについて、用語のおさらいをしておきます。
DCプラグとは、DC入力端子に差し込むケーブルの先についている接続部品のことです。DCジャックは、DC入力端子の装置側の接続部品のことで、今回の製品では装置内部の回路基板に実装されています。DCジャックにDCプラグを差し込むことで接続します。
それでは、どのように修理したのかについて、詳細に紹介します。
分解する前に、いつものように症状の特徴を確認します、DCプラグに軽く力を掛けると力の向きによって接続状態が変化したので、確かにDC入力の接続が不安定になっているようです。しかも、DCジャックがグラグラ動きます。
故障箇所は、限りなくDCジャックの辺りが疑われるので、DCジャックが実装されている基板を取り外すように分解を進めます。
裏カバーのネジを外して、裏カバーを開けます。
開けてみると、裏カバーについているアンテナからの白い線が短かくて作業しずらいので、写真3に示すように、アンテナからの白い線のコネクタを引き抜きます。
DCジャックが実装されている端子基板は、裏カバーについていました。端子基板は、コネクタとネジを外すことで簡単に取り外すことができます。
外した端子基板に実装されているDCジャックの半田付け箇所を目視で確認すると半田付け箇所にひびが入っていたのがずぐに分かりました。現象から考えて、これがDC入力の接触不良の主な原因と考えられます。
そこで、ひびの入っている箇所に半田を追加して再半田します。
また、DCジャックのハウジングもグラグラしていたので、再発防止のため接着剤で補強しました。
折角分解したので、ついでに中に入っている埃をブラシと掃除機でクリーニングします。
故障箇所の修正が完了したので、分解の逆の手順で、元通りに組立ます。
組立後の確認では、DC入力の接続の安定性は大幅に改善されましたが、色々な方向に軽く力を掛けると未だ接触不良を生じる場合がありました。DCジャックはしっかり半田付けしたので、残る考えられる原因はDCプラグとDCジャックのコンタクト部が汚れて古くなったことによる接触不良です。
そこで、呉工業(株)製の接点復活剤コンタクトスプレーを、DCプラグとDCジャックのコンタクト部に吹きかけました。接点復活剤は効果が出るまでに少し時間がかかりますが、数分後にはほぼ完全に接触不良は直りました。
実はお客様は、同様の症状のラジオをもう1台持って来ていました。
時間が余ったので、こちらも修理することにしました。修理の内容はほぼ同様なので割愛します。こちらも分解してみるとDCジャックの5つの端子全ての半田にひびが入っていました。
こちらも、再半田で修正するなど、同様の処置をして修理することができました。
今回修理したラジオは2台とも、同じような症状でした。。 分解してみると、DCジャックの半田付けにヒビが入っていたのが原因で、接続不良を起こしていた箇所を再半田することでうまく修理することができました。修理したお客様も「直って良かった。」と、喜んでいらっしゃいました。
この他の製品でも、DC入力の接続不良は何度か経験したことがあり、入力端子は故障の多い箇所と言えます。
DCジャックの半田付け箇所にひびが入りやすいのには理由があります。DCジャックが基板への半田付けのみで固定されているからです。このため、人がDCプラグからかけた力が、ほぼそのまま半田付け箇所に掛かってしまいます。本来、半田は電気的に接続するためのもので、機械的な強度はさほど強くありません。そのため、繰り返し力がかかったり、経時劣化などにより、容易にひびが入ってしまうのです。
そこで、今回は単に再半田で修理するばかりでなく、DCジャックのハウジングを基板に接着することで初期状態よりも信頼性の改善を試みました。DCジャックの中でハウジングが金属リードの部分の動きを押さえられる構造になっている場合には、この対策である程度の効果が期待できます。
このように、よくあるDC入力の接続不良は同様の原因によるものが多く、分解さえできれば故障箇所の特定が容易で、比較的修理しやすい故障モードであると言えます。
次回もお楽しみに!
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(今回のレポート担当:松島)